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新幹線に飛び乗って、数時間後。外は薄暗くなっていた。
改札を出ると、葉介が立っていた。
会うのは何年振りだろう?
「おかえり」と言われたので「ただいま」と言った。
まるでほんの一週間ぐらい旅行に行って帰ってきたみたいに。
変わってないな、とその表情を見て思うけど、あの頃より広くなった肩や細くなった顎が、会っていなかった月日を感じさせた。
葉介の目には、私はどんなふうに映っているんだろう。
車で来たからと駐車場へ連れて行かれ、助手席のドアを開けてくれた。
葉介の運転する乗り物なんて自転車しか知らなかったから、くすぐったくて少し緊張した。
そして真っ直ぐここに来た。
懐かしいこの場所に。
夕闇の中に浮かび上がる桜並木。まっすぐ校門へ続く道を行く。
「きれいだね」
「うん」
二人で肩を並べて歩く、桜トンネル。
あの頃と同じようで、同じじゃない。十年の月日が流れて、私たちは大人になった。
「あの時さ」
「うん」
「え・・・いつの時かわかってる?」
「わかってるよ」
わかるのか。それはきっとお互いがずっと思い続けていた「あの日」だからだ。
そう思って見上げる桜はきっと、あの日の桜だ。
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