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『合格したよ』
連絡が来た日、約束の場所で会った。
満開の桜がきれいすぎて、これを見るのは最後かもしれないと、どちらからともなく話し始めた。
「初めて会った時、覚えてる?」
「一年の時?」
「うん。席が隣で。最初に話した時、私になんて言ったと思う?」
「ああ、すげぇほっぺだだなぁって?」
「そうだよ!お前桜子っていうの?すげぇほっぺただな。桜子っていうより、桜餅じゃね?」
葉介のしゃべり方を真似して言うと
「そんな言い方したか?」
と笑った。お蔭で私のあだ名は桜餅になったんだからね!と怒ると
「ますます餅になってるぞ」
とふくれたほっぺたをからかった。
「そう言えば、誰かが言ってたな。俺たちはお似合いだって」
「え?」
「桜餅には、桜の葉っぱがつきものだろ?」
「葉っぱ?あぁ、葉介の葉っぱ?」
「そ」
「なんなの、それ。もっと早く言ってくれれば良かったのに」
「何が」
「葉介がお似合いなんて。私たちは友達のまま卒業したんだよ」
「うん」
「それでいいんだよね?」
「…それ俺に確認してるの」
「そうだよ」
「お前はそれでいいのかよ」
「わかんない」
「俺もわかんない」
二人でしばらく桜を見上げた。
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