(12)

1/17
前へ
/419ページ
次へ

(12)

~愛名side~ 悪阻の時期も過ぎて、妊娠5ヵ月目に入ると、少しだけ下腹部が膨らんできた。 そして、初めての胎動も感じた。 「私にも手伝わせて…柾貴さん」 柾貴さんは私が妊娠してから、極力外出を要する仕事はセーブした。 家事や料理も彼が率先してこなす。 「大丈夫か?愛名」 「柾貴さん、過保護過ぎますよ」 「だって…愛名は命を育んでいるんだ。無理は禁物だろ?」 「不安定な時期は過ぎたし、大丈夫ですよ」 「じゃ少しだけだからね…疲れたら、ちゃんと俺に言うんだぞ」 「はいはい」 私は彼の洗った食器を布巾で拭いた。 私の妊娠が判明してから、彼は私にまた触れなくなってしまった。 「…妊娠5ヵ月に入って、安定期に入ったから…Hもお腹を圧迫しない体位なら、できると先生が言ってましたよ」 「えっ!?」 彼は洗っていた硝子のグラスをシンクの中に落としてしまった。
/419ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3588人が本棚に入れています
本棚に追加