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出産もようやくクライマックスを迎え、助産婦さんの指示で、彼女は短足呼吸を繰り返した。
「おめでとうございます!!」
彼女の足の間からするりと滑るように赤ちゃんが飛び出してきた。
助産婦さんが生まれたての赤ちゃんを抱っこして、俺たちに見せる。
赤ちゃんは男児。
元気な産声が分娩室内に響き渡った。
愛名の瞳には大粒の感激の涙が溢れる。
「愛名…生まれたよ!!俺たちの子供だ・・・」
「お父さん!!抱っこしてください」
助産婦さんに促され、俺はついさっきまで愛名のお腹に居た赤ちゃんを抱っこする。
小さいけど腕にずしりとした重み。無意識に父親としての責任も感じているのかもしれない。
生まれたが、赤ちゃんはへその緒で愛名と繋がっていた。
「伊集院さん、へその緒切りますか?」
「あ・・・はい」
俺は促されるままに、へその緒を切った。
母親である愛名との繋がりは途切れ、一人の人として赤ちゃんはこの世界の住人になった。
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