0人が本棚に入れています
本棚に追加
「みやこー。まだかかるの?」
夢のような光景から目を覚まさせるのに充分な野太い声がした。同期に長濱さんを下の名前で呼び捨てにする者はいない。長濱さんは声の主である大柄な熊のような男の元へ駆け寄った。
「ごめんね」
するりと熊の腕に手を回す。横目で西野を見ると、彼も同じことを考えていたのか目が合った。
「長濱さん、その人ってお兄さんか……」
なにかですか? 言い終わる前に「彼氏です」きっぱりと言われてしまった。
「大学の先輩でね、昨日の夜から付き合うことになったんだ」
「へぇ、それはおめでとう」
「じゃ、あたしご飯食べに行くから、二人とも頑張ってね」
長濱さんにコンビニ袋を押し付けられた西野と無言のまま握手をした。そのまま体を抱き寄せ肩を叩く。それに事態を傍観していた老人も加わった。
「君達ってそんなに仲良かったっけ?」
長濱さんが少し引き気味に尋ねる。
「たった今仲良くなったんだ」そう答えた俺に「向井、今夜はとことん飲もうな」と西野の手に力が入る。それに応えるように俺の手にも力が入った。
最初のコメントを投稿しよう!