お花見

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 老人はもっともらしいことを口にして俺たちのシートに別のシートを広げた。ツイスターゲームだった。ルーレットで出た色に手足を置いていき、バランスを崩したら負けというあれだ。  呆気に取られる俺たちの横でルーレットの回転を確かめるように回している。 「兄ちゃん達名前は?」 「向井です」「西野です」聞かれると反射的に答えてしまう営業の癖が出てしまった。満足そうな顔で老人は頷く。 「では向井から行くぞ。……右足、赤!」  有無を言わさぬ老人の進行に狼狽えながらも右足を動かした。参加の意思表明したっけ? と考えていると緑の丸を左手を置く西野と目が合った。 「ちょっと待ってください」  西野が口を挟み、俺の次の指示を出すためにルーレットを回そうとしていた老人の手を止めた。 「向井、これでいいか? なんか成り行きでこうなっちゃったけど、負けた方が長濱を諦めるでいいか?」 「ああ、いいぞ。恨みっこなしだからな」  突然湧いたモチベーションに本心では少し戸惑いつつも俺は頷いた。老人も満面の笑みでルーレットを回す。「それでこそ青春だ」そんなことを呟きながら。
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