0人が本棚に入れています
本棚に追加
老人はもっともらしいことを口にして俺たちのシートに別のシートを広げた。ツイスターゲームだった。ルーレットで出た色に手足を置いていき、バランスを崩したら負けというあれだ。
呆気に取られる俺たちの横でルーレットの回転を確かめるように回している。
「兄ちゃん達名前は?」
「向井です」「西野です」聞かれると反射的に答えてしまう営業の癖が出てしまった。満足そうな顔で老人は頷く。
「では向井から行くぞ。……右足、赤!」
有無を言わさぬ老人の進行に狼狽えながらも右足を動かした。参加の意思表明したっけ? と考えていると緑の丸を左手を置く西野と目が合った。
「ちょっと待ってください」
西野が口を挟み、俺の次の指示を出すためにルーレットを回そうとしていた老人の手を止めた。
「向井、これでいいか? なんか成り行きでこうなっちゃったけど、負けた方が長濱を諦めるでいいか?」
「ああ、いいぞ。恨みっこなしだからな」
突然湧いたモチベーションに本心では少し戸惑いつつも俺は頷いた。老人も満面の笑みでルーレットを回す。「それでこそ青春だ」そんなことを呟きながら。
最初のコメントを投稿しよう!