サクラキャンディ

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サクラキャンディ

 職場の先輩が寿退社をすることになった。皆が花束を渡し先輩におめでとうを言う。  スラリと背の高い美人の笑顔は眼鏡ブスの私にはまぶし過ぎた。送別会の居酒屋に居場所を見つけるのは難しい。  そんな姿を目ざとく見つけた先輩が私に話しかけてくる。 「付き合わせてごめんね。これサクラキャンディって言うの。一粒食べると恋の魔法がかかるんだって」  先輩は手を振るとまた別の人のところへ挨拶に向かった。気使いの人。できる女。正直、ムカつく。  そう思いながら手のひらで飴玉を握り潰そうとした。どこかのブランドスイーツだろうか。まだ透明な袋のなかに入っているのに堪らなく鼻をくすぐるいい香りがする。  私は中身を取り出すと、もう一度香りを楽しみ、それを口のなかに放り込んだ。爽やかな甘みが口のなかに広がる。恐らく何かのお酒が入っているのだろう不思議と頬が上気してきた。 「大丈夫ですか?」  私の様子に気づいた山口くんが声を掛けてきた。うちの会社にオフィス用品を納入している業者の少し年下の爽やか男子だ。 「大丈夫だから」  気持ちが態度に現れてしまい必要以上のリアクションで彼を遠ざける。山口くんは笑顔で続けた。     
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