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「いい匂いですね。プレゼントですか?」
私には香水をつける習慣はなかった。驚き服の匂いを嗅ぐ。キャンディのせいだろうか体中から甘い香りが沸き立ってくる気がした。
離れた席で先輩が目を細めている。窓の外にちらつく雪を眺めながら、私は不思議と飴玉の魔法に寄りかかって見ようと思った。
「今から家に来ない?」
「俺、男ですよ?」
「送ってくれるだけで嬉しいの」
私の歴史にはないアイコンタクトの恋愛。酔っ払ったと嘘を付き二人で送別会を抜け出した。そのまま山口くんをマンションに誘い込み、二人でベッドに転がり込むと当然のように関係を持った。私は初めてだった。
山口くんの胸に顔をうずめ下手くそな告白をする。
「ずっと好きだったんだ」
「俺もですよ」
短い言葉で気持ちが繋がるのは嬉しかった。布団で顔を隠し息を吸い込むとベッドのなかにキャンディの香りがあふれていた。
「真面目に付き合ってくれる?」
「勿論、結婚を前提に」
私は山口くんの言葉に幸せをかみしめた。それから何度もメールのやり取りをし何度もデートを重ねた。
私は浮かれきっていた。本当に結婚をしたらどこへ住もう。手狭なワンルームを見渡しながら部屋の掃除をするためにベランダの戸を開けた。
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