幼馴染は複雑で。

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「いってきます」 家を出る前にそう言って、鏡に向かって笑いかけるのは昔からの癖。 「笑顔には周りの人だけじゃなくて、自分自身も明るく元気にしてくれる力があるのよ。」 お母さんのこの言葉は何年経っても覚えている。 だって本当にその通りだと思うから。 今日もその魔法の言葉を噛み締めながら、軽い足取りで学校へと向かって行く。 「おはよーう!!ねね、昨日のドラマ見た?最後のシーンさ、ヤバくなかった!?」 「おはよ、瑛茉は朝から元気だなー。ちゃんと見たからまずは席に座れ?」 いつも通りのあたしに、いつも通りの対応で返すのは柴田美月。 はーいと返事をしながら美月の横に座ると、他の人たちもわらわらと集まって来た。 「はい!うちもそこヤバイと思った!!もうマジで胸キュンって感じだった!」 明るく手を上げながら共感してくれたのは、夏希。 「だよねだよねー!?実際にやられたら引くけどドラマだとときめけるんだよなぁ。」 「うわっ、実際だと引くとか超ぜいたくー!」 なんて、見ている側は自由だと言わんばかりに言いたい放題。 こんな調子で、ホームルームの始まりのチャイムが鳴るまで話し続けた。 「てかさー、朝のドラマの話で思い出したんだけど」 お楽しみの昼休み、朝と同じように一つの席に身を寄せ合ってお弁当を食べている。 そんな中、夏希が斜め前あたりの席を見ながら言った。 「やっぱりあのイケメン俳優、須賀くんに似てない!?」 集まっていた女子全員の視線が彼、須賀蒼也に向けられる。 その後はもう共感の嵐だ。 わかるーとか、それずっと思ってた!など様々だが否定する人は誰もいない。 そんな声に気づき、本人がゆっくりとこちらを振り返る。 その動作だけで軽くざわめきが起こった。 「ん?何の話してたの」 「蒼也が今やってるドラマの俳優さんに似てるって話ー」 とあたしが返事をした途端、今まで黙っていた周りの女子達が突然、次々に彼を褒め始めた。 顔が整っているせいか硬派に見えるようで、話しかけづらいと思っている人が多いらしい。 彼は散々褒めちぎられた後、 「ふーん、そっか。ありがとう。」と軽く微笑み前に向き直った。 素っ気ないなと感じたが彼女たちには十分だったらしく、しばらく誰もが?を染めて呆然としていた。
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