一日目

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飛行機雲が好きだった。 それなのに青空に線を引く白く真っ直ぐなそれは見上げた空の何処にもない。夏らしい力強く濃い青色に薄くペンキを掃いたような白だけがそこにはあった。 幼い頃には飛行機雲の作る空の裂け目から魔物が出てくるのではないかと夢想したが、年齢が二桁になる頃にはサンタだって信じなくなった。もうすぐ30に手が届く年だが、腰や肩の痛みを感じるたびに時の流れは残酷だと思う。 川縁でしゃがんでいた瑞樹は立ち上がりパッパとズボンに着いた土埃を払った。洗い立ての服とズボンに申し訳ないと思いながら、ゆっくり斜面を登った。 「あの、この写真の男の子を見ませんでしたか?」 瑞樹は女の二人組に声をかけて自分より少し高い背丈を示す。派手な化粧をした二十そこそこの二人は写真を見、ぴくりと眉を上げそれから訝しげに瑞樹を見る。 「知らないけど……あなたこの子の何?」 胡散臭げな視線に対して瑞樹はにこりと人好きのする笑みを浮かべた。 「私は兄です。3日ほど家に帰ってないので心配で。以前から悪い遊びをしているようだったので少し心配で」 困ったように笑みを浮かべると、ふぅん、と二人は声をあげながら互いに目配せ
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