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天野ヒカリへ
──『………君、おーい聞こえていますかー』
僕は咄嗟に『ごめん、秋田さん』と言ってしまう。
少しムスッとしながら『秋田さんは止めて、名前で呼んで』と話す。
「えっ」
「えっ、じゃあ無いよ、美夏って呼んで」
「じゃあ………、美夏さん」
そう言うと、更にムスッとする。
「さん付けは止めてよ。じゃあ、私の事を
『みっちゃん』って呼んで、で私はキミの事、
『なっちゃん』って呼ぶから」
僕は渋々、『みっちゃん』と呼ぶと、ムスッとしていた顔が笑顔で僕を見つめてくる。
そして、続けて、
「なっちゃんは偉いよ」
「えっ、どうしたですか?急に」
と言うと、再びムスッとする。
「ごめん、どうしたの?急に」
「それでよろしい。なっちゃんは小さい時に一人で頑張ったんだね。私には出来ないよ、親と離れてまで」
「何で、それ知ってるの?」
「キミの事は知ってるよ、蛍キレイだったでしょ。あそこ地元しか知らないんだよ」
「えっ、もしかして………。」
「そう、お母さんからキミの事ずっと聞いてたんだよ、やっと会えたね」
彼女の後ろに燦然と輝く星達が眩むくらいの笑顔で僕を見つめる。
「──おーい、何、二人で話してるんだよ」
と春田が割り込み、そして柊木も続けて入って来る
そして、夜遅くまで眺めていた。
次の日はとても眠い中、何とか登頂でき、その頃になると僕は自然に『みっちゃん』と呼んでいた。
その数年後、僕は再びあの看護婦さんに会いに行く事になるとは………。
僕は今も忘れない、この日の事を───
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