終わりのない世界の中で

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 私の世界は閉じられ、扉はおろか窓もなく、規則的に配列された灯り――炎ではなく正体も知らない何かの光だ――があるばかりで、本にある「昼」と「夜」もここでは境が判然としない。  この世界に「外」があるのかはわからない。  ここを出たいと思っているのかどうかも、自分ではよくわからない。  私は記録にあふれたこの世界しか、知らない。  それでも、読み解く書物の中に謳われる満天の星空と、美しい月明り、そして、まばゆい陽の光というものが、ここではないどこかの天井の向こう側にはきっとあるからこそ、ここに記録されているのだろう。  本の中にはさまざまな食材、料理があったが、不思議と空腹というものは感じないし、食事を用意する術がない。  同様に、疲れもなく、いつまででも書物を読み進められるけれど、それでも、長く長く目を閉じてさえいれば、眠りに落ちることはできるかもしれないと、そっと瞼を下ろしてみることにした。  ふわふわとした絨毯敷きの回廊に寝そべり、身体を小さく丸める。  すると、灯りに背いた分だけ、闇が濃くなり心地よかった。  次に読もうと書架から取り上げていた厚めの本をぎゅっと抱き込むと、不思議な落ち着きを感じる。  私の規則的な呼吸音以外、本当に何もない、真っ暗な世界だ。  それにしても、睡眠とは、いったいどういう状態なのだろう。  その欲求を一度も感じたことがない身としては、どうなれば「そう」なのかも、記録の中の情報としてしか知りえない。  いわく、我知らず「落ちる」もので、「夢」なるものを見るのだとか。  時間はうんざりするほどたっぷりある。  今日は――今日という日の始まりも終わりも知らないが――ひとつ、眠りとやらを得るまでは、こうしていようと心に決めた。
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