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「ふう……」
桜を見つめて妄想に浸る──。
だって、私はこの春から念願の大学生になったのだから……でも恥ずかしくて大学構内では、同世代の男の子に声を掛ける勇気すらない。別に出会いを大学内に限定する必要性はない。
「そうよ。例えば、あの桜の木の下で素敵な方が私の手を握って、微笑んで……」
めぐみは誰にも止められない、妄想モードに突入していた。
「あ……」
そんな中でめぐみの目の前には、彼女の理想とする男性の姿があった。春の穏やかな風にサラサラした茶髪が揺れている。
突然の出会いに、めぐみは咄嗟に両手で口を抑えた。感嘆ともいえる声が口から零れる。
「嘘──いたわ。見つけた」
運命の人。
ついに、運命の人に出会えた。──と勝手にめぐみ自身が思い込んでいる。
この思い込み──否、妄想がめぐみを悲劇の渦へと突き落とす。
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