約束

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 3月は今日で終わり、明日から高校生になって2回目の4月を迎える。  春休みだけど、部活の顧問をしてくれていた先生の荷物整理を手伝いに来ている。  先生が学校に来るのは、今日が最後だ。今月いっぱいで転勤してしまう。 「悪いな。手伝ってもらって」  聞きなれた、聞き取りやすい声で先生が言う。 「いいですよ、暇でしたし。それにしても先生は持ち物が多すぎです。整理苦手なんですね」 「ははは……。お恥ずかしい」  私が先生の荷物量に対して素直な感想を述べると、先生は頭を掻いて苦笑いしながら答えた。  とはいえ、これで荷物はまとめ終わった。午後3時、教師は新年度の準備等で忙しそうなものだが、この学校の教師達はメリハリを付けるのが好きなようで、午前中で仕事を切り上げ教室に残っているのは先生と私の二人だけだった。 「今年は桜が早いな。入学式には散っちゃいそうだ」  先生が窓からグランドを見ている。  今年の春は暖かく、グランドに植えている桜たちはまさに満開。無人の学校を綺麗に薄いピンク色に彩っていた。 「お花見しようか。手伝ってもらったお礼にご馳走するよ」
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