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自動販売機で私はお茶を買ってもらい、先生はコーヒーを買った。
「大福にコーヒーって合うんですか?あんまり想像できないんですが……」
私が問いかけると、先生はいつもと同じ笑顔を浮かべる。
「何を言うんだ。コーヒー大福ってものが存在するんだから、大福にコーヒーが合わない筈はないだろう」
「そういうものですか」
こんなやり取りも今日で最後だと思うと、胸に寂しさがこみ上げてくる。
私は先生が好きだ。
今日の荷物整理の手伝いも、少しでも長く一緒にいたくて買って出たことだ。
学校の中でも一際大きな桜の木の下の芝生に座り、大福を食べる。
おいしい大福のような気もするが味がよく分からない。大福を食べ終わったら一緒にいられる時間も終わりだ。いっそ大福が無限にあれば、この時間がずっと続くのに……。
「おいしい大福だったな」
先生が満足げに言う。
終わってしまう、この時間が。先生との時間が。だからさよならをする前に、この思いを伝えたい。
思わず体に力が入り、両手で持っていたお茶のペットボトルがベコッと音を鳴らす。
「先生」
「ん?」
胸が締め付けられて上手くしゃべれない。でも、言わないと。言わないと伝わらない。
一度、深呼吸をして先生の目を見つめて、私は言葉を振り絞る。
「私、先生のことが好きです」
言えた。
思いを伝えて、少し胸が楽になる。
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