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きれいな顔が悲しみで歪んでいるのが暗がりでもわかる。
そっと前髪を撫でて、私はその美しい顔を自分の胸に引き込んだ。
頭を両腕で包み込む。
「辛かったね」
私は一晩中彼の悲しみにつき合った。
いつの間にか眠りに落ち、朝になっていた。
カーテンからは朝の光が漏れている。
「あれっ」
隣に君塚くんがいない。
ぼんやりとキッチンに目をやると、食事の準備をする姿が目に飛び込んできた。
「おはよう、つーちゃん」
「……おはよ」
その目は若干、涙のせいでむくんではいたものの、その程度で醜くなるほど君塚 聖の顔はヤワじゃない。
陽の光を受けて、爽やかさ三倍増の笑顔を見せた。
コーヒーテーブルには二人分のスクランブルエッグとソーセージが美味しそうに盛り付けられている。
その光景を見た時、この人と結婚できたらどんなにいいかと本っっ気で思った。
「昨日はありがとう。思い切り泣いたら落ち着いた。もう大丈夫」
「そっか。良かった」
朝になると何だか照れくさいけど、本人はそんな様子もなくいつも通りだった。
「今度は僕がつーちゃんを助けるよ」
じっと見据えられて、一瞬フリーズした。
「い、いやぁ、私はどんなに落ち込んでても眠れないって事はないから大丈夫だと思うな~!」
そう大声で言いながら洗面所へ向かった。
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