復讐

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復讐

あなた、こんなことをして」 紅い唇の間の闇から、かすれた音が漏れてきた。 「喋るんじゃない。この木はね、大事な大事な木なんだ。僕の家の代々が、ずっと守って来た木なんだ。ここで佐川と抱き合ったろう?僕の妻なのにね。美人だけどおつむの軽い、あさはかで下衆な君がこの桜にした冒涜を、君はここで償うんだ。ほら、口を閉じるなよ。ミルク飲み人形みたいに物欲しそうに開けてろよ」 昭三はしゃがみ込み、銃口を美輪子の柔らかな乳房にぐいと押し付ける。ぶるっと胴震いがして、湯気と、何かが流れながらしみ込む音。美輪子は失禁していた。 銃を引っ込めると、銃口に吸い付くように乳房はもとのふくらみを取り戻す。 また花びらがいくつも落ちてきて、乳房に張り付く。 銃をしまった手で花びらを載せた乳房を昭三は爪をたてて強く掴む。 あ、と痛みに顔をゆがめたようだが、そのまま指を動かすと、喘ぎにかわったようだった。 赤いレースの下から、涙の線が伝う。 あっちもこっちも水浸しだ、と昭三は笑う。 開いた両脚のそこへ、手を伸ばす。 指はなめらかに滑り込み、そこはくちゃ、と音を立てた。 ふう、ともふふっともつかない音が昭三の口から洩れた時、大きく呼び鈴が響いた。 「おお、佐川君だ。今日の宴の主賓だ。うまい酒を持ってくるらしいぞ。たのしみだなあ」 庭の敷石を渡る昭三の気持ちははずんでいた。 桜の木の下の、大股開きのあられもない姿の美輪子を肴に酒盛りだ。 小さなランプひとつが、桜の花びらに飾られて臭気の立つ毛氈の上に放置されたはすっぱな女を照らすだろう。客間の縁側からあれを見て、佐川はすぐ美輪子だと気づくだろうか。いや、気づいてもしらを切るかも知れない。 どうしてやろう。 あいつがあの恥ずかしい姿の女は美輪子だと認め、美輪子と寝たと白状するまで美輪子をいたぶってやろう。 そして銃で脅して、あいつがあの女としたことを俺の目の前で再現させるのだ。 恐怖と恥辱の中、貧相な絶頂に達したところを二人重ねて脳天を撃ち抜いてやる。 これは桜の木が、俺にさせる復讐なんだ-。
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