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「佐々木くん?」
呼ばれて振り向くと、舞い散る花びらの中から、女性が一人歩いてきた。
すらっと細身で、全体的に色素の薄い、小綺麗な人だ。
あまりそういう知り合いはいないが、その色の白い顔には見覚えがあった。
「……朝比奈……真由子か」
小中で一緒だった女子だ。よく話していたとか、ずっとクラスが一緒だったとか、そういう特別なことのない、普通の同級生。
「うん、そう。フルネームで覚えてくれてたんだね」
「記憶力は、いい方だと思ってるから」
「そうなんだ」
会話が止まる。
なんでこんなところに? なんて愚問だろう。同窓生なのだ。同窓会に行くに決まっている。
しかし、何を話そうか。別の話すようなこともないよな。久しぶり、とでも言えばいいのか。
中学二年のときに席が近く、班も一緒だったぐらいで、ほとんど絡みもなかったし、その後続かないよな、などと考える。
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