桜豪雪の日に

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「すぐ黙るよね、佐々木くん。変わってない」 「え……」 「班が一緒の時とかにさ、いつも佐々木くんで話が止まるの」 「そうだったか」 「そうだったよ。言うまでもないこと言わないようにとか、すぐ気にしちゃうんだよね」  言われてみれば、自分はそういうところがあるな、と思った。  今も何と答えるべきか、言葉を必死で選んでいる。 「修学旅行でさ、ちょっとだけ二人で回ったけど、なーんにも話さなかったよね」  朝比奈は笑う。  二人で回った、と言ったって班別行動の時間で、一緒に土産屋にいったほんの10分かそこらぐらいのことだ。  そのとき何も話さなかったとか、よく覚えているな。 「悪かったな、気の利いた話も出来なくて」 「嫌じゃなかったよ」  と、朝比奈は言って。 「ごめん、嘘」  すぐに否定。  なんなんだと思った直後に、 「好きだった」  俺は、言葉を失った。
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