桜豪雪の日に

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「やりたいことがあってさ。東京の大学に行ったけど、資格が取れなくて。フリーターしながら3年しがみついたけどダメで、こっちに戻されてさ。なんか……今、どこに行っても居辛くてさ」  口にしただけで、何が変わったわけじゃないのに、空気が抜けたように、身体の張りが緩んだ気がする。 「大丈夫」  朝比奈の返事はシンプルだった。 「出来なかったことに惨めになる必要なんてないよ。それに、何もかも終わり、なんて早々来ないんだから、気長にやればさ」 「気長にか」  言われて、なんだか妙に焦っていた自分に気付いた。  逆に何を焦っていたのか、その理由が知りたいぐらいだ。  気付けば俯き加減になっていた顔を上げる。  朝比奈がそれを見て、どこか安心したように微笑んだ気がした。
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