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わたしは、眠る。
その桜の木の下で。
わずかな時間、一緒にいられたことは忘れないから。
でもきっと、みんなはわたしのことを、いつか……いつか、忘れてしまうでしょう。
だから、その桜の木の下で眠り、命の源になって、いつか実るでしょう木の実になって、みんなを潤すのです。
まっかなさくらんぼの中に、わたしも在るのです。
あたたかな部屋の中で、大事に育ててくれてありがとう。
訪れたその時に、自由にしてくれてありがとう。
気持ち悪いと言われた時期を過ぎ、頑なな殻に閉じこもっていたわたしを待っててくれた。
大きく羽を広げたわたしをみて、笑顔になってくれた。
空へと放ってくれたのに、結局ははかない命のわたし。
みんなのそばで、命尽きてしまった。
眠る。
わたしは、眠る。
この桜の木の下で。
いつか実るその実になって、みんなの命の中にとけこめば、もう離れることはないでしょう。
眠り、朽ちて、いつかを祈りながらその時を迎えるまで……。
また会いましょう。
それがわたしの最期の言葉。
聞こえるはずもない、みんなへの思いです。
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