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「……」
「後は、冷蔵庫に十分から三十分ぐらい冷やすんだよ」
「あっ、そうなんですね。いきなり冷蔵庫に入れられたので驚きました」 「あー、そうだったね。何も言わずに入れちゃったから……と、この間に他の材料を……量らないと」
その人は僕との会話もすぐに切り上げ忙しそうに何やら量り始めた……。
「……」
僕は「今度は何をするのだろう?」と知らず知らずのうちに、この人の行動に目が離せなくなっていた。
「これでよし……っと」
「えっ!」
なんて思っている内にその人は、あっという間に必要な材料を量り終えた様だ。
「さて……と、じゃあ待っている間にちょっとお茶でもしようか」
「……」
あまりにすぐ終わってしまったので、僕はこの人が一体何を計量したのか全く分からなかった。
しかし、そもそも『お菓子作り』はおろか、『料理』すらした事の経験がないヤツが、口をはさむのも……失礼な話だ。
「うん。計量を先にしておいた方が後の工程で慌てなくて済むからね」
「じゃあ、さっきはなんで先に計量しなかったんですか」
「それは……ただ単にその方が確実に作れるかなぁって思っただけだよ」
「……その方がかえって慌てると思いますけど」
「あはは。そうかも知れないね」
「……」
なんて言って笑っていたが、実際のところ「いつもこうやって作っている」と言われてしまうと、僕は何も言えない。
ただ『いつも通り』という『ルーティン』は人間だけでなく動物にもあり、大事なモノではあるよな……と妙に納得していた。
「……」
「……もうそろそろいいかな」
小さく呟くと、そのまま冷蔵庫の中から先ほど入れた『生地』を取り出した。
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