1.フロランタン

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「うん。これならくっつかないかな……」  どうやら『生地』の状態はいいらしく、その人は『生地』を片手に持ったまま、冷蔵庫の扉を閉めた。  そして、別の所では何やら紙の上にラップをしたモノを準備し、その上に生地を置いて麺棒(めんぼう)で伸ばし始めた。 「それで伸ばしたら……フォークで穴を開けるんだよ。そんじゃ、コレ。ハイ」 「?」  なぜか突然その人は……僕にフォークを差し出した。 「えっ」 「ただ穴を開けるだけだから大丈夫だよ」  いや、正直そんな事を突然言われても、戸惑う。  しかし、なぜかその人の言い方は「バカにでも出来る……」なんて言われている様な気がし、僕は断りたくない気持ちになった。 「わっ、分かりました」  しょうがないので僕はその人から『フォーク』をもらい、おもむろに『生地』に穴を開け始めた。 「よし、じゃあ次はコレを焼いて冷ます……と」 「……」  すぐにその人は僕が『フォーク』で穴をあけた生地を受け取ると、ゆっくりとオーブンに入れ、『生地』を焼き始めた……。  ただ、僕は『なぜこの時、突然お菓子作り手伝わされたのか……』という事は未だに謎だ。  でも……そんな事以上にこの『お手伝い』が実は……かなり楽しかった。 ◆ ◆ ◆  そうして、『生地』が焼きあがると何やら『網』の上に『紙』と『生地』を一緒に置いた。 「よし、そんじゃ冷ましている間に……」  今度は、これまた先ほど計量した材料の入った小鍋を『中火』にかけた。
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