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「これでよし……と」
完成した『フロランタン』を何枚か透明の袋に入れ、キチッとリボンを結んだ。
そして、「パチンッ」と勢いよくラッピング用のリボンを切り、何やらモジャモジャした細い紙が敷き詰められた箱にいくつか並べ、箱の蓋を閉めた。
「ようやく完成ですか」
僕が確認すると、その人はこのお店のマークの様なモノが印刷された『シール』をラッピングした箱に貼った。
「うん。後は注文した人に渡してお会計してもらえば、このお仕事は終了だね」
「そうですか。あの……」
「ん?」
「ところで今日、お店の方はお休みなんですか?」
ずっと疑問に感じていた僕の質問に、その人は突然言いにくそうに僕から視線をそらした。
「あー、今日は……午前中だけ営業していたんだよ」
「そうなんですか?」
「いや、普通はしないんだけどね 」
「……僕のせいですか」
もしそうだとしたら……申し訳ない。
「いや、君のせいじゃないよ」
「でも……」
じゃあなぜ、いつもはしない事をしたのか……。
それを考え始めると、やはり『僕が店先に倒れていたから』という考えにどうしても行きついてしまう。
「お店を午前中だけにしたのは、この注文を早く終わらせたかったから……っていう自分勝手な理由だからさ、君が気にする事じゃないんだよ」
「……」
この人は多分、僕に気遣ってくれたのだと思う。でもそれが分かっていても、その言葉のおかげで僕は少し心が軽くなった気がした。
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