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ただ、どうしてそうなったのか……
ヘンゼルさん曰く……『最初は姉さんが手伝ってくれていたんだけど、父さんが体調を崩してね。看病に姉さんが行っちゃって……でも、知らない人に入ってもらうという気にもならなくて……』と言って笑った。
――――その結果、1人でずっと切り盛りをする……という状況になったらしい。
「さて……と」
とりあえず僕は外に出て、踏み台を使い、お店の玄関にかけられている「open《オープン》」と書かれた『札』をひっくり返し、「close《クローズ》」にした。
「おや、今日の営業は終わってしまったのか?」
「終わってしまった様だね」
「それは困ったな」
その瞬間、僕の背後から突然声が聞こえ、僕はすぐに振り返った。
「なんでこんなに早く閉めるんだ」
「いやいや、ここは怒っても仕方ない」
「しかし、何もせずに戻るのは……」
口々に言いたい放題言っているが、どうやらこのおじさんたちが声の主らしく、お菓子を買いに来たらしい。
人数を数えてみると……全員で7人いた。
そのおじさんの内の1人は眠いのか不自然に体を前後に動かし、今にも倒れそうになっては、眠そうに目を擦っている。
もちろん口には出さないが、「そんなに眠いなら家で寝ていればいいのに……」とその人を見ていると、こちらも心配をしてしまう。
「おや、君はここの従業員さんかね?」
「あっ、そうです」
突然声をかけられ驚いたが、意外に普通に反応していた。
「今日の営業は終わったの?」
「そうですね。今日の販売分は全て売れてしまったので」
「そうか。それは残念だ」
「申し訳ありません」
「なんでもっと作らないんだ」
「コラコラ。そんな事言っても仕方ないだろ?」
「……」
どうも寝不足気味の人と怒りっぽい人の2人が中でも特に特徴がある。
そうかと思っていると、中には物腰柔らかく丁寧な言葉遣いをする人もいる……。でも、七人もいれば色々な人がいる。
しかし、ここまでくると誰一人として言葉を被らせることなく上手く1人ずつ話しているのを見ると、「誰かが合図を送っているのか?」と思ってしまう。
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