1.フロランタン

3/15
前へ
/117ページ
次へ
「……えと、コレは?」 「うん? ああ、コレは『ナッツ』だよ。お菓子を作るときに使っているヤツだけど」 「ナッツ……ですか」  確かに、僕たち『リス』は『ナッツ』や『木の実』などを頬袋(ほおぶくろ)にたっぷり入れて(ふく)らませている……という姿をよくイメージされる。  でも実は僕たち、基本的に何でも食べる『雑食(ざっしょく)』だ。  だから、僕たちがよく食べるのは主に種やナッツ、果実に芽も食べる。だけど、ほかにも、植物やキノコなども食べられるのだ。  でも、人間の周囲では、野菜を農地や庭の植物も食べるため、農作物に害を与える『害獣(がいじゅう)』とみなされる事もある。 「あっ、他のモノが良かった?」 「いっ、いえ。それよりも『待ってて』とはどういう……?」 「ああ。今から『お菓子』でも作ろうと思ってね」 「えっ、でも……」  僕たちと人間では食べるモノが全然違う。それに、下手をすれば『毒』になってしまうモノもある。 「そうだね。俺と君じゃあ違うところが多いね。例えば……生活習慣とか?」 「えっと、一応僕たちは人間と同じように昼に活動して夜は寝ています」 「へぇ、そうなんだ」 「はい。あっ、でも睡眠時間は一日平均十五時間……くらいではありますけど」 「なっ、長いね」 「巣穴の中なら周囲に警戒する必要がないので」  そう言うと、その人は「ああ、なるほどね」と何やら納得していた。どんなリアクションをされようと、僕にとってはそれが日常だ。 「あの」 「ん?」 「なんで僕にここまでしてくれるんですか? こんな、食べ物まで……」 「なんで……って聞かれても」  ふと思った事を言っただけだ。しかし、その人は「うーん」と少し悩んでいた。 「まっまぁ、困った時はお互い様って言うじゃないか」 「たっ、確かに人間の言葉でそう言うモノがあるのは知っています」
/117ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加