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「へぇ、物知りだね」
「ですが」
「お腹を空かせて玄関先で倒れている子を放っておくことなんて……出来ないよ」
そして「それに……」と視線を僕から離し、店内に視線を移した。
「もう亡くなってしまったけど、母さん……動物が好きだったんだ」
「そうなんですか?」
「お菓子も好きな人だったけどね。だからよく怪我した鳥とか治してあげていたよ」
「あなたもそんなお母様の教えに従って?」
「そんな大層な話じゃないけどね。それにちょっと知り合いに『手土産に良さそうなモノを作って欲しい』って頼まれていてさ」
「はぁ……」
「多分君は食べられないと思うけど、それ食べながらちょっと見て欲しいなって」
「……なぜ?」
「まぁ、ちょっとしたお礼だと思ってさ」
「……」
この人もそう言っているし、ここまでしてもらって『その調理している姿を見ている事』がお礼になるのであれば、ありがたい話だ。
「はぁ……それでしたら」
一応、口では「分かった」と言ってはいたけど正直、納得はしていなかった。
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