1.フロランタン

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「……はぁ」  この『お菓子屋』は『木』で出来ていた。しかも、ペンキはあまり使われておらず、木の香りすら感じられる。  ある場所には『木製の椅子やテーブル』が置かれており、ここで購入した『お菓子』を食べることが出来る様だ。  ただ、この時。店内には僕たち以外誰もいなかった。  その事を尋ねると、「ああ、今日はもう閉店したから」と普通に返された。 「……」  そして今、僕たちは『厨房』にいる。 「ところで何を作るおつもりなんですか?」  そもそも僕たちの様な『自然界』で生きている動物と、人間の住む世界はお互いの生活を侵害(しんがい)しない限りこれといった『接点』がない。  いや、犬や猫。牛や馬などの家庭や飼育などで飼われている動物は、十分接点はある……か。 「えっと、『フロランタン』を作ろうと思っているよ」 「お風呂……とランタン?」  僕は最初にこの人から『作る物』を聞いた瞬間。頭には、『お菓子』どころか『食品』ですらない名前が()ぎった。 「あー、そこで区切り入れると変になるよ」 「えっ、あっ……違いました?」 「その区切り方だと……って、何を考えていたの」 「いっ、いやぁ」  これから作る『お菓子の名前』の話だったはずが、なぜか『風呂』と『ランタン』が浮かんだのかは……言葉の雰囲気のせいだろう。
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