1.フロランタン

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「あっ、あのそもそも『フロランタン』とは一体なんでしょう?」 「……君が何を考えたのかは、この際追求はしないけど」 「……助かります」 「で、『フロランタン』の話だったよね」 「はい」 「えっと、『フロランタン』はフランスという国のお菓子で、ドイツという国では、『フロレンティーナ』と呼ばれているお菓子の事だよ」 「へぇ、元々はフランスという国のお菓子なんですか」 「うん、どちらも「フィレンツェの」という意味で……」 「? どうしました?」  突然その人は動きをピタリと止めた。 「えっと、なんだったかな……」 「えぇ。忘れたんですか」 「いや……。あっ、そうだ。確か、嫁ぐ際にイタリアから伝えた……とか 、パリの製菓職人が考案した……とか、そもそもイタリアとは何の関わりもない菓子という説もあるとか……」 「……つまり諸説ありってことですか」 「そうだね」 「……」  サラリと言われて一瞬戸惑ったが、お菓子に限らず『歴史』は今でも解明されていない事が多い。  しかも、今まで解明されていた事が違う……という事も実はある。  その理由は『記録』する物が少なかった……という事もある。ただ、どんな時代でも『漏れなく全て』を記録する……という事は出来ない。  だからこそ、こういう事態が起きるのだろう。 「それで、この『フロランタン』はクッキー生地にキャラメルでコーティングしたナッツ類を使って……」 「えっ、ナッツですか?」
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