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出会いは突然訪れる……
「じゃあ、今日はコレとコレ……あっ、あとコレも!」
「はい……って」
俺は手に持っている木製のトレイから目を離さず尋ねた。
「……ん? 何?」
「こんなに食べるつもりか?」
手に持っているトレイには、女性が1人で食べるにはいささか……いや、かなり多すぎる数の『菓子』が乗っている。
「……そう? これくらい普通よ? みんなも普通にこれくらいは食べるし、ご褒美よ。ご褒美」
「そっ、そうか」
いくら身内とはいえ、本人がそう言うのであれば、それを否定はしない。
だが、頭では「鏡を前に後悔している」そんな姿が目に見えていた。
でも、俺がそんなお節介を言ったところで、この人は多分「大丈夫大丈夫!」と笑いとばすだろう。
「……コレで全部?」
「あっ、ちょっちょっと待って! うーん、やっぱりこのマフィンも……いや、こっちのスポンジケーキの方が……」
女性は、もう一度菓子をジッと見つめた。それはつまり、お会計にはまだまだ時間がかかる……という事だ。
◆ ◆ ◆
「……はぁ」
ため息をつきながら見上げた空は、ポカポカと暖かい陽気を感じられた。
こんな天気の良い日は、草原で寝っ転がって昼寝をするのがいいだろう。いや、昼寝だけではなく、ピクニックをするのにもってこいだ。
「全く、あの人は、いつも……突然頼むんだから」
あの女性……。
それはついさっきまで冷蔵庫の前で『お菓子』を吟味していた人で、俺の『姉』だ。
その帰り際――。
俺に向かって「たまには帰って来てよ? お父さんも心配しているから」と言って帰っていった……なり厄介な『注文』を俺に渡して。
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