2.パンケーキ

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2.パンケーキ

「ありがとうございました」  僕が笑顔で言うと、お客様は小さく会釈(えしゃく)をし、そのままお店の扉をゆっくりと閉めた。 「お疲れ様。マシュー(くん)」 「あっ、ヘンゼルさん。お疲れ様です」  厨房(ちゅうぼう)にいたヘンゼルさんは、お客様が出て行ったのを確認した上で、僕に話しかけた。 「今のが最後のお客様?」 「……そうですね」  僕は冷蔵庫を確認し、商品がなくなって店内を確認した上で答えた。 「そっか、そんじゃあ店じまいしようか」 「はい、そうしましょう」  ヘンゼルさんの言葉に返事をし、僕たちは早速『店じまい』を始めた――――。 「……ふぅ」  ふと見上げた空は綺麗(きれい)な『夕焼け』になっており、ちょうどそんな空を鳥たちが優雅(ゆうが)に飛んでいった。  今でもまだまだ『接客』は不慣れなところがあり、焦ってしまう事も多い。  でも、最初のころと比べると、随分(ずいぶん)スムーズに対応が出来る様になった気がする。  いや、ここにお世話になり始めてもう1カ月経つ。だから……多少は出来る様にならないと、自分自身の不器用(ぶきよう)さに泣きたくなってしまう。  しかし、普通……お店って、こんなに閉店時間にバラつきのあるものなのだろうか……と最初は疑問に思った。  でも、僕の知る限り『お店』という場所には、決められた『営業時間』というモノがあるはずだ。  しかし、このヘンゼルさんのお店にはキチンと決まった『営業時間』はなく、1日に作る『お菓子』の個数で店じまいをしていた。  元々『接客』も『お菓子作り』もずっとヘンゼルさんが1人でやってきたのだから、こういうやり方の方がいいのかも知れない。
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