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さくらと、私
疎水沿いの桜が満開になろうとしていた。
四月一日。世間がエイプリルフールだなんだと騒がしいのとは対照的に、ここは’シーン‘という擬音が聞こえそうなほど静かだ。
私は、死に場所を探していた。
明確に死にたかったわけではない。
けれど、明確に生きている意味もなかった。
「なにかやりたいことはないの?」
何度も聞かれた。
……何度考えてもなにもなかった。
私は、無なのだ。
「何もないって……。何かあるだろう? 自分のことなんだぞ? ちゃんと考えなさい」
もちろん、悪気があって言っているわけではないことはわかった。けれど、数え切れないほど聞いたその言葉は、何者でもない自分という存在を責められているようで、堪えられなかった。
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