校庭に咲く桜の木の下で

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桜の木の下を離れて女は歩き出してるし、俺もつられて歩き出してる。校門を出たら、帰る方向は別だ。ああ、もう終わるのか。 「思い出した。桜ソングまだあるわ。いきものがかりの『SAKURA』忘れちゃいけねえだろ」 くそ、何言ってんだ俺は。そんなことが言いたいわけじゃねえだろうが。 「ああ、あれもいい曲だよね」 隣で歩くお前の表情を頑張ってのぞきこもうとするんだけど、無表情で。くそ、お前にとっちゃ俺なんてのは、高校時代のオプションの一つでしかねえんだろうな。どうせ俺のことなんかあっという間に忘れちまうんだろうな。 くそ、もう校門じゃねえか。ああ、お前が手を振るから、俺がつられて手を振ってる。 「じゃあな。どうせもう会うことはねえだろうけど」 こんなこと言いたくねえのに、俺はこういう言い方しかできねえ。 「そうだね。じゃあ、元気でね」 「ああ。お前もせいぜい楽しく生きろよ」 「うん」 女はそう答えると、俺のほうを見ずに足早に校門を出て右の道を歩いていった。俺は左のほうに進んだ。振り向きたかったが、振り向けねえよ、俺は。とっくに雨は上がっていたが、俺の心のもやもや感同様に空は曇りのままだったわ。
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