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満月
宿題を終えるともう11時を回っていた。
スタンドの照明を消すとまっくら。
タオルケットの上にできた凹凸がかろうじてわかるのは
雲間から姿を現した三日月のせいだ。
あそこは、いつも満月-。
私、山里かれんはタオルケットを引き上げげ目をつぶる。
私は公園にいる。
公園というか、公園だったところ。
花壇らしきところは雑草がぼうぼうに生え、
中にちらちらサルビアや葉鶏頭が顔を出している。
敷石の隙間からも背の高いヒメジョオンがあちこち生えている。
敷石だってひび割れていたり、欠けていたりでとっても危険だ。
噴水は止まっているし、水の代わりに枯れ葉や塵が入っている。
それに、日時計。
ギリシャ風の柱の上に文字盤、蝶が止まったような形の指針が載っている。
私が立っているのはいつも、日時計の前。
日時計を中心にして東西南北を英語の頭文字で書いた円板が地面に敷いてあり、
その上に立っているのだ。
石板に小さなプレートがネジでとまっていて、これもサビがひどい。
かろうじて「昭和 十五年建之」と読める。五十五年なのかもっと前なのか。
この荒れ果てた公園は、四十年は経っているわけだ。
「こんばんは」
日時計を見ていたら男の子に声をかけられた。私と同じ歳くらい。
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