セイ

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セイ

「月の光じゃ時間はわからないよ」 警戒したのを気取られたのか、彼はちょっと苦笑いしたようだった。 こんな所にも街灯はあり、ブーンと音をたてながら、ちらちらようやく点いている。 なかなか爽やかそうなイケメン。 「君に何かしようって言うんじゃありません。ただ散歩してただけです」 少し置いて付け足す。 「君の夢の中を。」 そうだこれは夢だ。 例え危ない目に遭っても目覚めてしまえばすべて終わる。 まして彼はそんな事、とてもしそうにない紳士のようだ。 「私かれんって言います」 「僕は、セイ」 「高校生ですか?」 「さあ。なんでそう思う?」 「そのブレザー、制服じゃない?」 「なるほどね。」 セイはその時、ちょっとギクッとしたような顔をした。 すぐに笑顔を作り、 「じゃあ、かれんさん。夢の散歩に付き合ってくれませんか」 とブレザーを脱いでおどける。 「いいわよ」 こうして私はセイと、 毎日荒れ果てた公園の中を満月に照らされながら散歩する事になった。 セイがいつもワイシャツにズボン、スニーカーの、 学校帰りみたいな同じ格好であるように、私もいつも制服だった。 セイは頭が良く、何でもよく知っていた。 私は数学の解らない所を教えてもらったりしていた。 頭の良いイケメンとのデートは、 例え多少気味悪い場所でも、なかなかに楽しいのだ。
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