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F高生
佐貴子は私を図書館に引っ張って行く。
「高校生目覚めず」と言う見出しの、小さな新聞記事を佐貴子はすぐに見つけた。
県内有数の進学校F高の生徒が下校後帰宅せず、
両親や友人が探した所自宅から数キロ離れた公園の日時計の前で倒れており、
すぐに病院に搬送された。
身体的な異常は認められないが一週間目覚めず、現在自宅療養中である。
なぜ高校生が公園に倒れていたのか、なぜ眠り続けるのかは不明で、
警察で当日彼を公園付近で見かけた人を探していると言う記事だった。
日付を見ると、二週間前だ。
夢に出てくる公園のセイはこの記事のF高の生徒なんだろうか。
「お見舞い行ってみよう」
佐貴子の発案で、彼女のうろ覚えの記憶を頼りに志田家へ向かった。
家は山手に建つ新しく瀟洒な建物だった。
佐貴子の制服姿を見て、志田聖のママは喜んで入れてくれた。
「どうぞ声をかけてやってください。目覚める事もあると医者が…。」
語尾を涙につまらせて、志田聖くんのきれいなママは
聖くんの部屋のドアを開ける。
そこには-。
点滴の瓶の下、少し痩せて青白い顔で眠るセイが居た。
「志田さん、志田先輩、2Aの青山佐貴子です。志田さん。」
息をのんで志田聖の顔を凝視する私を取り繕うように、
佐貴子は呼び続けた。
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