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 入ったまま彼の身体を抱きしめ、しばらく動かずじっとする。そこはとても温かく、ずっと接続していられたらと願わずにはいられない心地よさで、ただちょっとでも長い間そのままでいられたらと思う。 「ね……え、もう」  耐えられないというように、尻をうごめかす彼に、私は我に返る。誰がくるともわからないこんな場所で、私は愛の行為におよんでいるのだ。早く済まさねばならない。  私は、彼にしっかりと壁に手をつくよう言いつけ、突いた。 「ん……ふ、……ん、ん、」  なるべく声を出さないように、彼は自分のセーターの袖を噛んでいる。せわしなく交わり、私だけが達した。  あわててみなりを戻す。この寒さにかかわらず、彼の首筋は汗ばんでいる。そこに顔をうずめて、彼のものにふれる。たよりない私の手の動きにあわせて、彼はせつなく身体をゆする。彼の首に蜜があるかのように吸う私は、蝶というより腹をすかせた犬だ。  はあはあと荒い呼吸で舐めまくる。彼はますます袖を噛み、涙ぐむ。 「あ、っ、それ、……あ、あ、や、……あ」 やがて彼の精は勢いよく飛び、私の手に滴る。私はその手をまだ降っている雨に差しだした。彼の体液が雨と混ざり、私の手をつたって地面に落ちてゆく。  次の約束をして別れた。  このまま一生会えなくなるなど思いもしなかった。  その日は、妻に仕事と偽り、彼に会いに行った。  そんなことをするのは神に誓って初めてだった。  狙いすましたかのように、下の赤ん坊が熱性けいれんをおこし、救急車で運ばれた。妻はすぐ私の勤め先である学校に連絡し、私の嘘がばれた。
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