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私が、怒りとあきらめと軽蔑の顔をした妻からののしられていた時、彼は消防員から説明を受けていた。
彼は彼で、老いた母親を一人残して、私に会いに行ったのだ。
彼もそんなことをするのは、神に誓って初めてのことだった。
母親は息子のいない間に煙草を吸おうとして、火の不始末から火事になった。
幸いぼやで済んだが、貧しい家庭には修復しがたい大きな打撃だった。
消防車のサイレンと救急車のサイレン。
小さな街に二つが鳴り響いて、大騒ぎになった。私たちが動物園で会っていたことはすぐに人々の噂になった。
狭い田舎町で、好奇と嘲りの目に晒され、それに対し何のてだてもなく、我々は様々なものをたくさん失った。しかし逃げる場所などなかった。
彼と私はそのまま、川を隔てた隣町に住み続けた。こっち側と向こう側でお互いの気配を感じながら。
それはまるで壁を隔てた展示室AとB。
生きているのに死んでいるような暮らし。
時は過ぎ、子どもが巣立ち、妻とも別れた。しかしその頃には彼に会いにゆく勇気もやり直す気力も、私に残されていない。
生活とは、年を取るとはそういうことだ。じわじわと何かを、奪い取られる消耗戦だ。
彼もまた、とうの昔に病気の母親を看取ったと噂で聞いた。
しかし時は彼からも確実にいろんなものを奪い取ったのだ。
我々は、ガラスケースの中で息を殺すようにして死が迎えに来るのを待っていた。
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