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「はは、きたねえな、はは」
泣きながら笑ってしまった真樹がうれしくて、俺は指に歯をたてる。
「バカ!食うな!ぎゃははははは」
「むぐご、おむぉいだへなくて、ごうぇんなー、またへて、ごうぇんなー」
むごむごと謝って、俺と真樹はげらげら笑った。
「あと、話さなきゃいけないことがある」
真樹は涙をポケットからとりだしたものでふきながら、言った。
「え、なに」
「実は俺、お前を殺したの、一回だけじゃないんだ」
広げてしげしげと見てから、きちんとたたみなおしてまたポケットにしまった。
「えー」
「『前』の話だ。家庭があるのを隠していたことがどうしても許せなくて、お前のいる病院に行った」
「病院?んんん?」
「じじいのお前が死にかけてたんだけど、呼吸器はずしてとどめさした」
「わーお」
「あとね、」
「あ、とりあえず今はいいよ。うん、またゆっくり聞くよ」
「……そうだな」
割とこの人、昔っからエキセントリックだった。王子時代もすぐキーってなって、むかつくやつは片っ端から処刑処刑言って、俺がいさめたんだった。何を言い出されるかわからん。怖い。でも、まあ、だいたいそういうのって俺が原因なことが多いから、受けとめるしか仕方あるめえ。
横顔を盗み見る。なんかしゅんとしててかわいい。
俺はわざとらしく咳ばらいをした。
「……えーゴホン、なあ、その前にさあ、することあるんじゃないかなーっと。俺ら恋人どーしってわかったばっかじゃん?」
「……」
真樹はうなずくと緊張の面持ちで腕を広げた。俺たちはハグしあった。
ずっと友だちだったから、加減がわからなくて、それは体育会系っぽい、とても力強いものになった。
「ええと」
「おう」
「あとちゅうだな」
「そうだな」
二人、ぎこちなくハグをといた。俺はどぎまぎしながら、真樹に向き合った。
えーとえーと。
「口がタコ口になってる!!」
笑った顔がかわいくて、そのまま顔を近づける。
再会のキスは何度しても甘く切なくて、少し涙の味がする。
またたく間に俺の頭の中はお花畑だ。ちょうちょがひらひらとびまくる。ヒャッホウ!!
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