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「父王は二人の恋を知っていた。生きている時は、二人を、特に兄に厳しく接した。でも二人をたて続けに亡くして初めて、若くして死んだ子らを哀れに思った。兄の棺を弟の墓にいれてやったんだ」 「天国で結ばれるようにと?」  私が尋ねると彼は自信たっぷりにうなずく。 「そういう話って、誰かが必ず死ぬ。そう、誰かが死なないと、みんないろんなことがわからない」  彼の吐く息が白い。 「二人は死をもって安息を得たはずだったんだ」  ところが、永遠だと約束された死者の蜜月は1000年に満たなかった。予期せぬ形で終わりは訪れた。  戦争が起こり、国は滅びた。別の大陸からはるばるやってきた学者たちによって、二人の墓はあばかれた。根こそぎ略奪され、すべて自国に持ち去られた。二つの棺も海を渡った。  調査という名の屈辱を受けた後は、冷たい石の建物に展示された。  それが展示室AとB。すべてを見ようものなら、最低一週間はかかる巨大ミュージアムの片隅の部屋。  一枚の薄い壁を背中合わせにして隔てられたその場所に、それぞれの棺がガラスケースに入れられて設置された。  お互いの気配を感じながら、決して姿を見ることのできない絶望。二人、また離れ離れになってしまった。  そこまで言うと、彼は立ち上がって、傘をさした。私も自分の傘をさすとレディ・バージニアの幻影に別れを告げた。
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