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「お、大島、えっと……完くん……?」
「ああ。フルネームでどうも」
「えっとじゃあ……」
あれ、と混乱する。自分で言ったセリフが、どうにもおかしい気がしてならない。
「似ている、というか全く同じなはずだけど、違うって何だ……」
「落ち着け。説明、するから」
「せつめい……?」
「き……苑田が、去年会ったのは、兄なんだ」
「あ、に?」
「ああ。双子の、兄だ」
「……双子って、ソメイヨシノみたいに?」
「そうだな。同じ、DNAを持っている」
苦笑いを浮かべると、なぜだか見たことがないはずの「彼」を彷彿とさせた。声が、息遣いが、やっぱり似ている――どころか、変わらないくらい。
「今は……入院している。脳腫瘍が見つかって、夏に手術をしたけど、目を覚まさない」
「……そ、れは」
掛ける言葉が、なかった。いつかと同じだ。ぐっと喉の奥が苦しくなる。けれど、いいんだ、となだめるように、完が肩を叩いた。
「気にするな。こんな話、嫌か?」
「ううん。そうじゃない。聞きたい」
止めようなくあふれるなぜ、に答えがないまま過ごすのは、もうたくさんだった。
なぜ、動けなかったのか。
なぜ、別れを示唆するのか。
なぜ、あんなにも嬉しそうに笑ったのか。
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