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黙り込んだ相手をううん? と伺うと、怖い顔ではなく、少々青い顔で睨まれた。
「それの、どこが、精霊?」
「え、だめ?」
「完っ全にホラーだから! 幽霊はダメ。ダメだって絶対! 嫌いなの知ってんじゃん」
いや~その道通れない、と叫ぶ友奈。心配しなくても彼女の家は反対方向なので、通学では使わない。
「怪談は早すぎだからっ」
「でも桜とホラーは割と定番……」
「おだまりっ」
くわぁっとむしろ鬼だねと突っ込みたくなるような顔で怖がっている友奈を、分かったわかった、両手をかざしてなだめる。
「ちゃんと確かめてくるから」
「……ほんとに? 」
「ほんとほんと」
「さすが。頼りになるぅ。カッコいいね!」
「なにそれ。きっとさぁ。あれだよあれ」
「あれって?」
「花だったってやつ」
「いや知らないし」
曖昧過ぎて進まなくなった会話に、後ろからくすっと笑い声がした。
「『正体見たり、枯れ尾花』じゃないの?」
「そうそれ!って、麻木さんじゃん。さすが生徒会長、学年トップテン。物知りだね」
両手に重そうな辞書を抱えて、クラスメイトの麻木マイが立っていた。
「あと、枯れ尾花はススキのことだよ」
「へえ。花じゃなくてススキなんだ、幽霊」
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