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「ハイハイ。でもほら、スポーツできて、背が高くてスレンダーでカッコいいから」
「私は宝塚の趣味はない」
「でも女子から告白される、と」
「一回だけだし。一回だけだから! っと……ごめん」
騒いでいたら、危うく角でぶつかりそうになった。とっさに半身下がって危機を回避する。相手も、一歩戻って体をそらしていた。
「大島、ごめん。前見てなかった」
同学年の男子だ。背丈はちょうど同じくらいで、ぶつかった場合にはもろに頭突きになったと思われる。学ランの上着はなく、手荷物の多さから、バスケ部の戻りのようだ。ボールの形になった袋がある。
「……」
「もしかして、当たった?」
「いや」
首を振って否定される。
「そう、じゃあ……また」
視線が合ったのに、それ以上のリアクションはなかった。ほとんどしゃべったことがなかったが、もともと無口な性質なのか。黙ったまま、首肯だけが返ってきた。
同じように、脇を通り抜けて小走りになった友奈が、一瞬振り返る。
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