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オフロードバイクに乗り、うねうねと曲がりくねった県道を登り、さらに脇道に入る。
通る人も車もなく、道は雑草に覆われつつある。
地図にも載らず、もはや地名すらない、そんな集落を通り過ぎる。
祖父母が住んでいた村。
さらに山道、獣道をを登る。
こういうシチュエーションは、オフロードバイクの得意とするところだ。
道を探り探り、やっと目的地に着いた。
山頂近くの、山桜の下。
エンジンを止めると、静寂が耳を打つ。
ヘルメットを脱ぎ、大人の私でも抱えきれないほどの太い幹に、そっと掌を合わせる。
「ただいま、桜姫様」
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