3弁 「彼女」

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3弁 「彼女」

「はっくしょん!」  しまった、抑えきれなかった。周りの視線が、目の前の桜から私に移る。止めてよ、見ないでよ。私なんかより桜をみた方がよっぽど良いよ。  杉の葉っぱみたいにチクチクした視線が刺さる。恥ずかしい。私は地面を見て、とにかく足を動かした。  すると、彼がいた。 「ごめん、聞いてなかった。なんて?」  四年分低くなった、拓人君の声だ。 「ああ。いや、俺一人で良かったのにわざわざ来てくれて悪いなーって思って。」  聞いたことのない声が、拓人君の声をかき消す。新しい友達が出来たんだ。 「いいよ。俺が来たかったんだから。」  どうする、私。勇気出せ。チャンスだ。もし忘れてたら。嫌われたら。目の前にいる。早く。早く。私。 「あのー、すみません。」   ぶかぶかのジャンパーが、茂みの中を歩いた様な音を出す。拓人君が振り返った。  間違えた、茂みじゃなくて、花畑だ。そう思った。     
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