3弁 「彼女」

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 沈黙が流れた。後ろでは友達がまだ騒いでいるけど、深い、深い、沈黙だった。 「あの、まあ、なんてゆーか……」  心臓がいたい。こんなに緊張するのは初めてかもしれない。拓人君はもっと緊張してるのかな。  お互い同じ気持ちなんだから、もっと気楽にいけば良いのに。この緊張は、正直なんの意味もない気がする。  時の流れが、すごく遅く感じる。目の前では拓人君が顔を真っ赤にして、地面を見つめている。  長い時間が過ぎて、誰も写真を撮らなくなった頃、 「ねーねー! 玲奈も来なよ!」  私の腕を握った手が、体を揺らした。美香の声だ。彼がまるで夢から覚めたみたいに、顔を上げて、眼孔を広くした。その目は、私をくぐり抜けて、後ろにいる美香を見つめている。あっ、とかすれた声が聞こえた。 「あの、ちょっと今は……」 「大丈夫、いいよ。ごめんね。いきなり。」  拓人君は逃げるようにして、まだまだ騒がしい卒業後の団らんに溶けていった。  これで、終わり。  
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