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「かなこ~、一緒に帰ろう!」 部活終わりにトロンボーンの美奈が手を大きく振って合図してきた。 「ごめーん、今日晃二と帰る約束してるー。」 「う~~っリア充恨む~ぅ!」 眉間にシワを寄せて叫ぶ美奈に、クスクスと笑い声が立った。 かなこは校門の端で、サッカー部が終わるのを待った。 帰っていく吹奏楽部のみんなに手を振りながら。 「じゃあね。」卓也とも手を振り合った。 胸がザワザワしてしまう。 「カナ、ごめーん!お待たせ!」 守山晃二がスパイクを仕舞いながら走ってきた。 「お疲れ。」 お互いの笑顔を確認しあった。 高校に入学して間もなく晃二から告白されて付き合い始めた。 かなこも、クラスのムードメーカー的な存在で、明るく頭の良い晃二には、はじめから好印象だった。 「カナ、スタバ寄って帰ろうよ。」 「うん、賛成!」 スパイクを仕舞い終えた晃二は、左手で、かなこの右手を取った。 大きなゴツゴツした手が、かなこは好きだった。 「そうそう、オレさぁ、次期キャプテンに決まった。」 「おぉ!おめでとう!!」 「ありがと。」キャラメルフラペチーノを飲みながら、誇らしげな笑顔の晃二。 「カナも部長だもんな。」 「うん。」 「お互い頑張ろうな。」 「そうだね!あぁ~晃二のキャプテン姿観たいなぁ~。」 「吹奏楽部も忙しいから、なかなか試合観に来れないよなー。」 「そうなんだよね~。晃二はサッカーしてる時がカッコいいのになぁ~。」 「普段そうでもないふうに言うなよー。」 笑い合って、テーブルの上で手を繋いだ。 晃二はいつも優しくて、いつも楽しい。 マメにLINEをくれるし、誕生日には少ないお小遣いを貯めてネックレスを買ってくれた。 卓也と付き合っていた時は、プレゼントなんて貰ったことが無かった。 LINEも必要最低限。 手も繋いだことがなかった。 「そろそろ帰ろっか。」 「うん。」 1時間ほどの時間が一瞬に感じる。 晃二は話しが上手いし面白い。 お互い部活が忙しい分、たまに過ごす二人の時間がとても貴重だった。 いつもの道も、手を繋いで歩くと、景色が違って見えるのは不思議だ。 公園前の分かれ道。 「カナ。」 晃二の顔が近付く。 いつもの、優しいキスだった。
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