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夏休みに入り、コンクールに向けて合宿が始まった。 5年連続で金賞を獲っているプレッシャーが、徐々に2・3年生の気持ちの余裕を失わせていた。 「かなこ、ハナの指、本番までに間に合わなかったらどうすんの?」 3年の部長でトランペットの唯先輩が、ただでさえ焦っているかなこの気持ちを、更に追い込む。 フルートパートは3年生が居ない為、かなこがパートリーダーだ。 「その時は、美紗がハナのところをカバーします。」 「あっ、そう。美紗、ピンチヒッターだからって、中途半端な演奏しないでよね。」 「あ、はいっ!」 1年の美紗の心臓の音が聞こえてきそうだ。 「美紗、あんまりプレッシャー感じないでいいからね。・・って無理だよねぇ・・」 唯先輩が居なくなって、そっと美紗の背中を擦った。 「唯先輩、ピリピリしてるね~。」同じフルート2年の侑里は、ハナの肩を抱き寄せて、励ますようにポンポンと頭を優しく撫でた。 「美紗ごめんね、なるべく吹けるように努力する。」ハナもなかなか痛みが引かない焦りと申し訳なさで、涙目だ。 「もう、本番までにそれぞれが最大限の努力をするしかないよね!頑張ろっ!」 普段底抜けに明るいフルートパートだけど、さすがにもうジョークを飛ばす余力は無かった。 合宿も終え、学校での練習が始まった。 中学の時から毎年夏は緊張感のある時間を過ごしている。 みんなコンクールで金賞を取る為に吹奏楽をやっていると言っても、過言ではない。 精神的にもギリギリで、夢の中でも合奏をするときもあり、朝からグッタリする。 そんな朝でも、晃二からのLINEで少し勇気が湧く。 【カナ、おはよう】 【今日も練習頑張って!!】 【オレも試合頑張る!】 【大好きだよ~♪】 ニヤニヤしながら返信する。 【おはよう!】 【しんどいけど、頑張る!】 【今日応援行けなくてごめんね】 【決勝には行けるから、今日も勝って勝ち進んで!】 【私も大好き!!】 晃二が心の支えだ。
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