6/70
前へ
/70ページ
次へ
コンクール本番の朝 。 かなこは朝ごはんも喉に通らず、母の見送りにも硬い顔で応えて家を出た。 いつもの公園前に差し掛かると、見慣れた背中がそこにあった。 「おはよっ!」 晃二が振り向いて笑顔で手を振っている。 「本番前に顔見て、パワーを授けようと思ってさ。」 かなこは小走りで駆け寄った。 「え~っ?!もぉービックリしたぁ!嬉しい!ありがとう!!」 「ちょっと、もう泣いてんの?!」 思いもよらず会えて、嬉しくて泣いてしまったかなこの頭を、優しく撫でて笑う晃二。 「カナ、頑張ってこいよ。」 「うん!!明日のサッカー部に繋げられるように、最高の結果出してくるよ!」 「ありがとう。・・久々に会えたね。」かなこを笑顔で見つめる晃二。 部活が忙しくて会えない間も、毎日LINEをくれた。 そして、こうして短い時間でも会いに来てくれた晃二の優しさに、かなこは感動していた。 「カナなら大丈夫だよ。今日まで頑張ったんだから、自信持っていい演奏してきて。」 「うん!」 笑い合っていたら、晃二はキョロキョロ辺りを見渡し始めた。 「えっ?なに?どしたの??」 かなこがあまりにも挙動不審な晃二を心配していると、ギュっと、日焼けした腕に引き寄せられ、抱きしめられた。 「朝っぱらから、こんなことしてもいいか一瞬迷ってさ」と笑った。 「誰も見てないよな?」 「うん、たぶんね。」 筋肉質な逞しいカラダからは、毎日のトレーニングの厳しさが伝わるようだった。
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加