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コンクール本番の朝 。
かなこは朝ごはんも喉に通らず、母の見送りにも硬い顔で応えて家を出た。
いつもの公園前に差し掛かると、見慣れた背中がそこにあった。
「おはよっ!」
晃二が振り向いて笑顔で手を振っている。
「本番前に顔見て、パワーを授けようと思ってさ。」
かなこは小走りで駆け寄った。
「え~っ?!もぉービックリしたぁ!嬉しい!ありがとう!!」
「ちょっと、もう泣いてんの?!」
思いもよらず会えて、嬉しくて泣いてしまったかなこの頭を、優しく撫でて笑う晃二。
「カナ、頑張ってこいよ。」
「うん!!明日のサッカー部に繋げられるように、最高の結果出してくるよ!」
「ありがとう。・・久々に会えたね。」かなこを笑顔で見つめる晃二。
部活が忙しくて会えない間も、毎日LINEをくれた。
そして、こうして短い時間でも会いに来てくれた晃二の優しさに、かなこは感動していた。
「カナなら大丈夫だよ。今日まで頑張ったんだから、自信持っていい演奏してきて。」
「うん!」
笑い合っていたら、晃二はキョロキョロ辺りを見渡し始めた。
「えっ?なに?どしたの??」
かなこがあまりにも挙動不審な晃二を心配していると、ギュっと、日焼けした腕に引き寄せられ、抱きしめられた。
「朝っぱらから、こんなことしてもいいか一瞬迷ってさ」と笑った。
「誰も見てないよな?」
「うん、たぶんね。」
筋肉質な逞しいカラダからは、毎日のトレーニングの厳しさが伝わるようだった。
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