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ーーーいろは。
ーーー大好きよ、いろは。
母さんっ!
行かないでよ!!
ーーー大丈夫よ、いろは。
ーーー母さんはいつだってあなたの味方だから、ね?
母さん………っ!!
その日を境に、母さんは俺に話しかけることも、笑いかけることも、叱ることもなくなった。
俺を置いて、何処か遠くへ行ってしまった。
白い部屋の真ん中の、白いベッドの上で、白い服を着た人たちが囲む中で、静かに目を閉じた。
まだ小学校に上がる前の子供には残酷な別れだった。
どうして自分が、どうして自分だけ、どうして。
誰も答えてはくれなかった。
皆、一様に顔を逸らした。
憐れみの視線だけ投げかけた。
傷心中の幼子を置き去りにして、やれ相続はどうするだの、やれ誰が引き取るだの、まるで邪魔だと言われているようで、
死にたくなった。
生きることが嫌になった。
独りになることが恐怖だった。
母さん。
俺は、独りだよ。
どうしたらいいの…?
誰か、教えてよ。ねえ…。
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